星組「ベルサイユのばら」


星組「ベルサイユのばら」元旦初日を、めでたく立見で観てきました(^_^;)。
苦言も書きますが、一見の価値はあると思うので、どうかご自分の感性で楽しんで観て下さいね。

まず幕開けの小公子(麻尋しゅん)、小公女(妃咲せあら・蒼乃夕妃)は、皆とても可愛く、学年的にも、スター性的にも、ピッタリの配役でした。
特に麻尋は、ルイ16世(英真なおき)に常についている侍童としての出番でも可愛らしさが良く目立ち、歌のソロも上手くて良かったです。

プロローグはアントワネット・オスカル・フェルゼンがそれぞれ絵から出てくるオーソドックスなもの。
白羽ゆり・朝海ひかる・湖月わたる(登場順)は豪華な扮装が良く似合い、とても美しかったです。
続く本舞台でのプロローグも、回り舞台を使ったいつものパターンながらますます豪華。回りで踊るばらの少女たちの衣装や鬘も新しいのではないでしょうか?(そんなに前回のベルばらをしっかり覚えていないのですが^_^;)、フワフワとしていて、とにかくキレイでした。

続く本編の物語に関しては、観ながら「出ている人皆がバカに見える・・」と思ったんです。
それがなぜか、上手く言葉で表現できないかと考えたのですが、それがスッキリ分かりました。
植田先生は、TPO(場所柄と、時と、言う相手)が考えられていないんですよ。それでこの作品の間違いの全てが説明できる気がします。

一番華々しく呆れたのが一幕ラストの新場面。
フェルゼンが、「ベルサイユ宮の中心で愛を叫ぶ」(笑)。

言いたい事は分かるんですよ。
「フェルゼンが帰国するのは婚約の為だと言われていたが、それはフェルゼンがアントワネット様の事を思って身を引いた為だったのだ。それ位フェルゼンはアントワネットを愛していたのだ。」
って事が言いたい訳です。植田先生は観客に伝えたい訳です。
ただ、TPOを考えずに、ベルサイユ宮のど真ん中で、国王陛下始めお歴々の前で叫ばせるから、フェルゼンが考えなしのバカに見えるだけ。

他の場面においても、作られる場面数は限られていて、そこで詰め込みたい登場人物の台詞をまとめて言わせるから、TPOを考えていない、バカばっかりが登場する事になるんですよ。
観客にそう思われてしまっては、いくら感動の名場面が網羅されていても、物語としてやはり元も子もないと思いました。

湖月わたるのフェルゼン。上記の場面等、物語のほとんどが共感できない、素敵に見えない人物に見えてしまって気の毒。フェルゼンって、控えめな、男らしいのが魅力のはずなのに・・脚本で全っっ然表現できていないんですよね~。
物語の終盤、アントワネットを助けにフランスへ旅立つ「行け行けフェルゼン」のナンバーになって、ブーツ姿も凛々しく、急にかっこ良くなったな(^_^;)、と思いました。続く、牢獄の場面も良かったです。ただ、そこからでは時既に遅し、と言えそう。

白羽ゆりのアントワネット。姿がとても華やかで美しく、衣装が良く似合っていました。2幕の革命委員会に王子を連れ去られる場面など、貫禄も見えて感心。
ボートの場面では秘めた恋のはずなのに生き生きしすぎではないか? 2幕の国王との語りでも幸せそうにしすぎではないか? 革命委員会に突き飛ばされるコケっ振りはブレンダちゃん(「青い鳥をさがして」)入ってないか? ワッカのスカートを持ち上げすぎて足下が見えすぎているのも~、等、若くて経験がない分つっこみ所は割とありましたが(^_^;)、基本的にアントワネットが似合う気品と華があるので満足です。
このつっこみ所も、観ていて分かりやすいので、既にファンにつっこまれて、今頃はなおっているかもしれませんね(^_^;)。
私としては、前回の宝塚の娘役を意識しすぎた、自分を抑えた可愛らしい演技よりも、今回の体当たりの演技の方がずっと良かったです。

朝海ひかるのオスカル。正に劇画から抜け出したような美しさ。私としては、今まででみたオスカルの中で、見た目は一番理想に近いかもしれない、と思いました。
女性の部分を何度も人前で出さなければならない脚本にはなっているけれど、女々しくなり過ぎず、繊細ながら凛とした立ち姿を保ってくれたのは本当にありがたかったです。

アンドレの安蘭けい。やはり安蘭に、オスカルを影で支える包容力のあるアンドレは、何かイメージが違うと思います。観る前から分かっていた事ですし、なぜ安蘭に大劇場でオスカルをさせずに、似合わないフェルゼンとアンドレを演らせるのかが、運命のいたずらと言うか(^_^;)、劇団の分からない所なのですけれど。
ただ銀橋でのソロは、溜飲の下がる素晴らしさでした。

他では、ブイエ将軍の汝鳥伶は、悪役に徹していましたね。
ルイ16世の英真なおきは、国王の頼りない所が強調されるばかりで、人物の良い所が出ていないのが不満。
モンゼット侯爵夫人の出雲綾がピッタリで安心。シッシーナ伯爵夫人の高央りおが、男役も生かした思いきった熱演で印象に残りました。
ロザリーの陽月華はこういう可憐な役だと声の悪さが気になってもう一つ。

セットや衣装は本当に繊細で美しく、これは作品毎に技術の進歩を感じ、一見の価値があります。
しかし、私はそれを見ながら、その財力と技術力を他の作品に使って欲しい(^_^;)と、心の底から思いました。

終演後も、今年の目玉、待ちに待ったベルばらの初日! というには、客席の盛り上がり、拍手が少なかったと思うのは、私だけではないのでは?
このままの状態で、本当に歌舞伎のように、宝塚の宝として、再演され続けて良い作品なのか?
今度再演される時には、もう無理だと言わず、ぜひ考えて頂きたいと思います。