雪組ドラマシティ公演「睡れる月」


雪組ドラマシティ公演「睡れる月」、3/26&29に観てきました!
(以下、ネタバレです。)

出演者は隅々まで豪華で充実していますし、日本物の化粧はさすがにキレイ。お芝居も上手。見所は多いのに、なぜか退屈でした。でも、しみじみとした訴えるメッセージはあり、一度は観たら良いと思う作品です。

まずは物語が難しいのはあると思います。私は事前にプログラムを熟読し、「大野先生の南北朝ものよ、さぁかかっていらっしゃい!」という意気込みで観たので(^_^;)、大体分かりましたが。
出演者が多彩で、各々にかなり物語をつけてくれていたので、その点は嬉しかったのですが、やはり全員の物語をたっぷりとは見せきれず、各々の役が中途半端なまま終わってしまい、「この人がここに至るまでのエピソードをもっと観たかった」と思う所が多かったです。

あと、おそらく大野先生がこの物語で言いたかったのは、「高望みはダメよ。普通が一番。」という事ではないかと思うのですが、普通に生きている中納言(朝海ひかる)よりも、高望みした式部卿宮(貴城けい)の方が、物語の主筋を引っぱっていて面白いし、共感できるんですね。
物語も中納言の死によって、式部卿宮が「私はお前が普通に暮らせるようにしたかっただけなのに・・」みたいな事を言い、考え方が変わる、という件が、一番のポイントだったと思うんですよ。
つまり式部卿宮の心の物語。「普通に生きようとした中納言の、それも叶わなかった哀れな物語」というには、式部卿宮のキャラクターが勝ちすぎています。
貴城好きなのでそれも良いですが(^_^;)、作品としてどうなんだろう? とは思いました。

中納言の朝海。安定した頼もしい出来でした。死ぬ間際に式部卿宮に抱えられている件など、何の問題もなく可愛い弟に見えるから不思議。
しっかりした頼もしい弟みたいだから、式部卿宮も何もかも一人で抱えこまずに、手伝ってもらえば良いのに・・と思いながら観ていたのですが、ラストのあの様子を見ると、守りたくなる気持ちも分かる、義教(一樹千尋)が「可愛い子を隠してたな」みたいな事を言うのも分かる、という魅力はやはり得難いですね(^_^;)。

式部卿宮の貴城。良い役でしたし、日本物の装束は文句なく似合っているし、とても良かったです。
義教の寵愛を受けて、宮家を支えているという設定で、昔の雪組で、貴城が小姓系の役を良く演っていた頃を思い出してしまって、そんな可愛い役の子が、その傷を持ったまま美しい青年に成長したようで、観ていて何だか懐かしい気がしてならなかったです(^_^;)。

大君+二宮の舞風りら。大君は楚々と美しく、二宮は抑えた台詞の声も、歩き方などもキリッとしていて新鮮でした。ヒロインが男装して・・っていう、これだけのシュツエーションなのに、全く色気を感じないのが辛い所ですけれど・・。

将軍義教の一樹が嫌らしくて良かったです。前半で死んでしまって残念な位(^_^;)。この人暗殺までの話で良かったような気が・・。楠木二郎の未来優希は武将らしく頼もしい。
後は日野宗子の美穂圭子、観世小次郎の麻愛めぐるが特に良かったです。

若手では衛門督の柊巴。今まで上手いイメージはなかった人なのですが(^_^;)、気軽に楽しく話す様子が自然で良かったです。大君の事を告白する件は、もうすこしたっぷりとがんばって欲しかったですけれど。
そして中君の山科愛。可憐で愛らしくてピッタリでした。

退団の安城志紀は、やはり日本物の化粧がとても良く似合っていて、目元涼しく美しい。正に「若様」という感じでした。事前に話題にもしたのですが、歌が聞きたかったです・・(涙)。
うさぎチーム、きつねチームの辺りが、何だか一番分かりにくかったですが(^_^;)、貴船尚が相変わらずの良いキャラクターで場面を盛り上げていましたね。
また事情は分かるけれど、今まで大したバックボーンを描いていなかった笹花の小君(天勢いづる)に、二人とも殺させなくても・・とは思いました。刺した後の動揺などは、すごく上手かったです。