宙組大劇場公演「ホテル ステラマリス/レヴュー伝説」本公演&新人公演


宙組大劇場公演、「ホテル ステラマリス/レヴュー伝説」、1/1&1/23、1/18新人公演を観ました!

元旦に観てすぐに書かなかったのは、2F席で良く分からなかったというのもあるし、感想としてあまり良い事は書けないな、と思ったのもあります。そういう意味で、次に観る頃にはかなり良くなっているだろう、と期待を込めて観ました。
結果、確かに出演者は随分慣れて、良くなったと思います。
しかし、改めて「あまり面白くない作品だな」とも思いました。

自然の美しい、格式あるホテルが、倒産の危機に瀕した所を、思わぬ所で救われる、その主筋は面白いし、下級生まで細かく役が配分され歌や台詞が聞けるし、最後には皆で銀橋を渡るなど、ファンには演出も嬉しい。

しかしまず、物語が楽しめない原因として、ホテルが魅力的に見えない、というのがあると思います。
いくら客ではないにしても、外部の男(和央ようか)がいる前で、ホテルのロビーで大きな声でグチを言う従業員たち。料理長(遼河はるひ)まで場所柄をわきまえず支配人(水夏希)と喧嘩。その理由を「不安を持っているからだ」とステイシー(花總まり)はウィリアム(和央)に弁解していますが、そんなホテルを見て、ウィリアムは、「働いている人は良いんだけれどな~」みたいな事を言うでしょうか?  いくら本当は再建しなければならない野心があるとは言え。・・・まぁ、そういう裏の心まで和央は見せておらず、素直に「働いている人は良いんだけれどな~」と思っているだけに見えるのですが(^_^;)。

美談としてあるグリーン夫妻(美郷真也&鈴奈沙也)のバースデーの件も、あんなに大勢の従業員に囲まれてロビーで大合唱されたら嫌だ(^_^;)、と思うのは私だけ?
何だかフレンドリーで人情派だけれど、しっかりした上質のホテルには見えません。

本当は、もっと自然に近い、リゾート色の強いホテルと考えるべきなのかも。
例えば、「青く輝く海」の明るく開放的な雰囲気を、もっとホテル内部にも感じさせてくれれば、従業員のフレンドリーさも、良点に映ったかもしれません。
しかし、そうなると従業員のかっちりとした服装が不自然です(服装は今回全体的にイマイチ)。冒頭の黒エンビでの社交界シーンも、そのイメージには合いません。
やはり、従業員が私情で騒いでいるのがホテルの玄関口っていうのが、印象的にまずいのでしょうね・・結局の所は。

新公は、現代物の自然なお芝居は新人には難しいのだろうな~、と改めて思いました。
派手な衣装や演出でのごまかしが効かず、本公演で感じた物語の物足りなさは、演出でも、若さでも、アドリブでもカバーはされておらず(^_^;)、もう一歩の感がありました。
下手か上手いかという問題でなく、一回キリのイベントとして、新公が本公演以上に感動できる事は、良くある事だと思うんですよね。「あの新公は良かった」と言われる為には、それくらいのインパクトが欲しいです。
しかし個人的には、久しぶりに新公が見られ(宙組は「白昼の稲妻」以来)、しかも久しぶりに1Fの座席に座って観たので(新公はほとんどが立見)、それだけで本当はとても嬉しかったです(^_^;)。

ウィリアムの和央。茫洋と言ったら言葉が悪いかもしれませんが、ほわ~っとしたのが持ち味であり、和央の良さだと思うのですが、そんな和央の背中のネジを無理矢理まいて、テンポを上げているような、見ていて苦しさがありました。特に元旦に観た時は。
台詞の声が鼻のあたりにこもるような、少し舌足らずなのも気になり、前半の丁々発止の台詞のやりとりの辺りよりは、後半エリートとして堂々と登場してからの方が、ずっと存在感が出て良かったです。

しかしウィリアムって、アリソン(彩乃かなみ)と別れるのも彼女に決断させるし、ステイシーが抱きついてもそれ以上は自分からは何もしようとしないし・・。こういうのが正塚先生的「かっこ良い男」なんでしょうかね~?  私には何だかあまり良い男には見えないのですが・・。

新公の七帆ひかるは、幕開きの歌は緊張していたようですが、その他ではやはり歌声が良いのが一番。
スーツのズボンのラインも思った以上にスッキリとしていて、無理なく大人っぽく、男役らしく見え、「やはり背の高いのは特だな~」としみじみ思いました。
もう一歩、新公らしい覇気とか、創意工夫が足りず、大人に見える事を意識しすぎたのか大人しく見えるのは残念でしたが、新公メンバーの中では安心感があり、頼もしいですね。
今回の新公メンバーの中で誰が良かったか? と言われれば、やはり私なら七帆です。・・と言うか、他よりは良いので、主役は納得、という所でしょうか。

ステイシーの花總。新公を見れば、やはりどれだけ花總が上手いかが良く分かりましたが(^_^;)、何となく沈んでいて魅力がないような・・アリソンの彩乃かなみが艶やか過ぎるからでしょうか?  事務的台詞の多い色気を出しにくい役だとは思いますが、それでも醸し出す何か・・みたいなものを感じないのが物足りなかったです。
あと、演出面ですが、あの貧血で倒れて、転がって号泣、というのは・・現実的にあり得るのでしょうか?  何かの作品から取ったのかな?  これも不自然に感じるし、美しくもない気がします。衣装が不自然なのもありますよね、きっと。「スーツが汚れるじゃない」とか、気になりますし(^_^;)。
大体、ハイヒールで海辺の岩場を散歩しているのも、すごーく違和感あるんですよね・・。

新公の咲花は、可愛らしい娘役さんで今回の新公主役は嬉しかったのですが、まず冒頭のテープでの長台詞が悪く言えば棒読み気味で(^_^;)、以降もそれほど酷くはないにしろ、気持ちが台詞に入っていないな~、と感じる所が多く、ここが「花總は上手いんだな」と思った点です。
見た目が可愛らしいので幼く見えるのは、今回の役には不利。体型は随分スッキリして、花總まりの衣装も思ったよりはずっときれいに着こなしていました。歌も思った以上に上手かったのは収穫。期待株なのは変わらないので、まだまだこれからがんばって欲しいです。

アレン(水)はステイシーへの気持ちもちゃんと伝えられる場面があるし、ウィリアムよりずっとおいしい役だと思います。水は最近公演毎に頼もしく、おいしい役を、ちゃんとおいしく見せていました。

新公の和涼華は見た目すっきりとあか抜けているし、芝居にも歌にも安定感があるし、頼もしいという点では七帆と双璧。本当に、「末は香寿たつきか?」と思うほど、出来上がっているのを感じました。以前はそんな印象はなかったので、随分上手くなったのでしょうね。
しかし、結構渋い印象もあり、好みの問題かもしれませんが、私的にはあまり面白味がない気がしました。

プレスコットの大和悠河。動きの可笑しさ・・というよりはぎこちなさが、歌の可笑しさ・・というよりはマズさが、本気なのかギャグなのか、カッコつけてるつもりなのか笑えば良いのか、良く分からなくて、初日は、客席全体に微妙~な空気が流れていたのが忘れられません。
私は基本的に大和が好きなのですが、「いくら何でもこれはヤバいんじゃないだろうか?」と思いました。元旦の時点で感想を書けなかった理由がここにもあります(^_^;)。

新公の早霧せいなは、まだ笑わせようと狙って演っているのが、分かっただけでも良かったかも。
しかし、早霧もどちらかと言うと、大和と同じく「可愛くって魅力があって面白いんだけれどね~」タイプなので(^_^;)、全体的には大和と同じような雰囲気で、この役の正解は見えず終い。
誰かあの銀橋の歌を、ちゃんと聴かせて欲しいです。

大和を2回目に観た時には、ようやくあの歌はふざけた歌なんだというのが分かりましたし、姿の良さがパッと目を引くのを感じもしました。しかし、あの空回り具合はマズい気がしますよ・・。
キャリアを考えれば、演出家はそろそろ大和に無理をさせるのをやめて、あの魅力を良い方に生かす事を考えて欲しいです。何でも万能にこなすのが、スターの条件ではないと思うので。

アリソンの彩乃は、既に一度書きましたがとても良かったです。見た目艶やかで、金持ちのお嬢様っぽい勝ち気さも出ているし、ウィリアムと会話する所でも芝居の上手さを感じました。
新公の音乃いづみは下手ではないけれど、髪型、化粧を含め、魅力の点で彩乃に数段落ちる気がします。

マクファーソンの寿つかさは、「BOXMAN」に引き続きもうけ役。ほんのりと憎めないキャラになるのが寿の良い所。
新公の十輝いりすはその「BOXMAN」での不思議キャラもありますし、今回本公演の不思議キャラもありますし、ファンには結構顔を覚えてもらって、この役を演るのを楽しみにしていた人も多かったと思うんです。
しかし、確かに本人のぬお~っとした持ち味が出ていて面白い所もあったけれど、全体にはまだまだ。本役以上の面白さは出ていませんでした。寿もそんなに芝居の上手い人ではないですが、やっぱり十輝も上手い人ではないんですよね。それも分かっていたのですが、二枚目とは言えないこの役で、一つ殻をやぶって欲しいと、歌劇団も期待していたと思うし、私も期待していたので残念でした。
そんな中身に反して、見た目はどんどんキレイになっていて、冒頭従業員で踊っている所は、他の新公メンバーとは異次元のように華やかで目立っていました。七帆と芝居する所で、何とも言えない気安さが出ていたのは、同期ならではでしょうね。

本公演の白衣のエドワードは何者なのか?  どうやら皿を数えているようですが、それが仕事なの?  なぜに白衣?  耳のイヤホンは?  という、おかしな隠れキャラになっています(^_^;)。まぁ、十輝の為に作られた役だと思うので、演りやすいだろうとは思いますが、それにしても良い味出ていますよ。
ちなみに新公は、これまたそんな意味で(?)注目の暁郷でした。感想は・・髪型が変(笑)。それで笑いを取りにいったのでしょうけれど。普通の髪型で、あれだけ可笑しい十輝の個性はすごいと思いました(^_^;)。

ダニエルの遼河はるひは「THE LAST PARTY」に引き続き、ああいう頑固と言うか、厳しさのある男性の役が意外と似合っているような気がします。新公の真木薫はキレイだけれど台詞はまだまだ。最後の新公だけに、もう少し歌の聞ける役が見たかったです。
リンドンの悠未ひろは良い役で、ちゃんと誠実に演じていましたし、優しげな持ち味も生きていて良かったです。新公の凪七瑠海は上手かったですが、悠未の上着がぶかぶかで(笑)、見た目がちょっと可笑しくて気の毒でした。

未沙のえる、出雲綾、貴柳みどりは、それぞれ個性に合った役で安心して見ていられます。
新公でも、未沙の役の風莉じん、出雲の役の芽映はるか、貴柳の役の美羽あさひが抜群でした。
風莉は歌も上手いのはもちろん、工夫があって、笑わせてくれたのが嬉しい。美羽は今とてもキレイになっているだけに、今回本公演ともども配役で埋もれているのは残念。もう一度はヒロインがあっても良いと思う娘役さんです。

何だかすごく長くなってすみません(^_^;)。ショーは簡単に・・。
モンパリ77周年を記念して・・という通り、昔の宝塚を懐古する気持ちは分かるし、それからヒントを得たミニストーリーも悪くないと思います。しかし、こちらもあまり面白くないショーでした。

まず、衣装がイマイチ! 物語もですが。チープな上に、形も悪いし、色の趣味も悪いです。だから美しさに酔えず、おとぎ話のファンタジーにも酔えないような気がします。
あのかって見た事のない大きな装置に費用を全部取られてしまったのでしょうか。
私としては、それよりも、スターさんがキレイに見える事の方が大事なのですが・・。

次に、今更ベテランの和央&花總コンビに、この物語もないだろう? という問題。
特に、花總のジジの可愛さときたら感心する位で、和央との新コンビ誕生の歌は楽しい。けれど、こんな二人が見たいのではないのだけれど~、という思いが常にありました。
今回、芝居、ショーとも、和央にも花總にも元気がないように見えるのですが、役のせいもありそう。
それにしても、二人にとって、この公演は沢山主演している中のたった一つ。この公演がコケた所で、二人にとっては大した痛手ではないんだろうな・・みたいな。ここ一番の気合いを感じない、つなぎ感覚が見えるような気がして、どうにも乗れませんでした。
年末に熱い星組公演を見てきたばかりだからでしょうか(笑)。

「BOXMAN」の時も書いたのですが、和央の顔色が悪いのも気になります。「BOXMAN」や今回の芝居はスーツものだから良いとしても、ショーはもっと口紅を赤くして、せめて姿の華やかさを感じさせて欲しいです。
また「長髪の和央」「鬘の和央」と言っても良いくらい、鬘が得意のイメージが私の中にあったのですが、今回のショーの鬘は意外な程イマイチです。プロローグも、オーレリアン登場の場面も。

最後に配役問題。和央&花總のデュエットは確かに美しいですが、多すぎるでしょう、いくら何でも。
幕開きのクシダ(未沙のえる)&ヨンヨン(出雲綾)の歌には手拍子が入るのに、最後の大階段のデュエットで和央と花總が銀橋に出てきた時に拍手がなかったのには驚きました。客席もいい加減冷めている気がします。演出のせいですよ。
そして若手がさっぱり使われないのは、いつものことですが、ひどすぎます。さすが若手男役潰しの宙組!!(・・だんだん怒り入ってきました)
ストーリーが一通り終わった所へ、銀橋に登場したのが水&大和だったのには正直がっかりしました。大和なんて、第3場と同じような白の軍服ではないですか。
せめて遼河や悠未、引いて七帆や十輝くらいなら、銀橋を渡らせてくれても良さそうなものだと思うのですが。宙組生まれの長身軍団が公演毎に頼もしさを増しているのは確かで、活躍させてくれればもっと宙組は面白くなると思うのに・・。

このショーで良かったのは、花總の白ダルマ。分かっちゃいるけれど相変わらず足キレイ長い!
水中心の大階段の白コートダンス。水が一番かっこ良く見える瞬間です(^_^;)。
髪型がラブリーすぎるロケット。かなりインパクトあります(^_^;)。
そして、咲花、早霧、花影アリス、凪七のアンファン。皆とてもキレイで可愛かったです。