花組大劇場公演「マラケシュ・紅の墓標/エンター・ザ・レビュー」


花組大劇場公演「マラケシュ・紅の墓標/エンター・ザ・レビュー」を、初日含めて既に3回(笑)、観てきました。

「マラケシュ~」は、「螺旋のオルフェ」以来の荻田先生の大劇場芝居の2作目。初日すぐに観て、友人とどういう話だったのかについて3時間程語り合い、3回観劇してようやくすっきりした「螺旋」に比べると(「螺旋」は日を経るにつれて、演出が親切になっていったんですよ)、「マラケシュ」は一回ちゃんと観れば大体分かりますし、一般通常の大劇場作品に近づいている気がします。
しかし、後でプログラムの解説を読むと、「そんなのあの舞台を観ただけでは分からないって・・」と思う所もありますし、2回、3回と観て、新たに分かった事も沢山あります。そういう意味で、単純明快でないのは確か。しっかり観ていなかったら、そのうち分からなくなって退屈する人が多いだろうな、とは簡単に想像できます(^_^;)。

私はどうも、最近の虚勢をはったような春野寿美礼の演技が苦手で(毎回書いてすみません)、それでも春野は世間では人気のあるトップさんですし、歌の上手いトップさんは私にとっても貴重。私も良さを理解して、堪能したい、と思っているんです。上手く当て書きしてくれる荻田先生が考える、春野の魅力とは何なのだろう? どうか教えて下さい、という気持ちで観ました。

最初の2回では良く分かりませんでした。樹里咲穂演じるレオンは、彼女本来の明るさ、若さ、軽やかさが生きたかっこ良い役だと思いますし、彩吹真央のクリフォードは上品、端正、優しそうな持ち味が生きていると思います。見た目が骨太、だまっていればこわもてにも見える(^_^;)蘭寿とむに、あのギュンターという役が振られたのも良く分かるし、華奢でキレイな愛音羽麗にイズメルも分かるし、誠実な未涼亜希にウラジミールも合っています。
では、リュドヴィークは春野のどういう面を生かした役なのでしょう? かっこ良い男ではあるんだな、とは分かるのですが、それ以上の事が良く分かりません。良く分からないのが良く言えば摩訶不思議、それが魅力なのかな? とも思ったのですが。
オリガ(ふづき美世)と語っている件は、相変わらず気取るばかりで辛い。響かせすぎる台詞の声も不自然。
パリの幻想場面でイヴェット(遠野あすか)に出会い、一目惚れしている件は、とても良い表情をしているのに・・。「この薔薇がぼくからの(あなたからの)おくりものだったら・・」とデュエットしている所なども、すごく良い。

オリガと散歩して夜明けを迎える場面。「私たちは幻を抱き合っているんです・・」という言葉を、どこまで言葉通りに解釈するのか、というのは、観る人によって違って良いのではないかと思うのですが、3回目の観劇の時、ここを100%言葉通りに取れば良いのではないか? と、私は思いました。
宝塚ファンの常識で主演コンビは愛し合うものだという先入観があり、あの場面を見ると、あの二人は愛し合っているのかと思うのですが、どうもそうは見えず、それ故に解釈が混迷します。

あのパリの幻想・・リュドヴィークはイヴェットを愛した、オリガはアレクサンドル(眉月凰)を愛した。現実には終わってしまった恋でも、二人は本心はそれを抱え込んでいる。そして、その思いをラクに解き放てられるのがそれぞれの存在。リュドヴィークはイヴェットを思い、オリガを抱いている。オリガはアレクサンドルを思い、リュドヴィークを抱いている・・。
そう思うと、スッキリ納得して物語に浸れたのです。
このコンビの愛のなさが、荻田先生の計算に入っているのではないかと。ちゃんと春野&ふづきコンビに当て書きされた物語なのではないかと。そう思うと、すごいな~、上手いな~、良いな~、と感心しました。

トップコンビ、上記の男役たちの他も、魅力的な当て書きキャラクターが沢山出てくるのが楽しい。沢山過ぎて全員書くのは今回は控えますが(^_^;)。
個人的にお気に入りは夏美ようのコルベット。久しぶりに渋くてかっこ良い~(*^。^*)。
そして遠野のイヴェット! 彼女の魅力が物語を引っぱっていると言っても過言ではないでしょう。すごく良い役で、荻田先生が楽しんで書いているのが良く分かるし、遠野も良く期待に応えていると思います。初日は力みすぎ(特に歌)、演り過ぎの感がありましたが、見る度に肩の力が抜けてきているので、これからの成長も楽しみです。

ショーは酒井先生。バラエティーに富んでいるけれど、これといった場面がなく、各々の場面につながりがない為か、盛り上がりに欠けるショーでした。芝居で疲れるので(^_^;)、頭を空っぽにして観ると、ちょうどバランスが良いのではないかと思います。

好きなのは初舞台生のラインダンス。今年は衣装も鬘もキレイで良いです。初舞台生も出番がここだけの為か(^_^;)、元気いっぱい。
そして続くフィナーレ。ワイン系の衣装がキレイで良いです。久しぶりの大階段の4組デュエットで、「最近トップコンビばかりだな~」と思っていた所だったので、嬉しかったです。

それにしても、本っ当~に、春野はふづきの方をちらっとしか見ないし、笑顔もないですね。今回は他の3人の男役(彩吹・蘭寿・愛音)がちゃんと相手を見て良い雰囲気で踊っているので、余計そう思います。
まぁ、それが持ち味で、ファンはそれが良いのだと思っているかもしれないので、言っても仕方ないのかもしれないですが。(絡みまくってすみません・・どうでも良い人なら放っておくのですが・・)
相手役を大事そうにされると、その相手役さんも果報者に見えるし、魅力的に見えると思うんですよ。そして、全体にも、そのカップルが微笑ましく見えると思うんです。
どうも相手役とラブラブに見せるのが得意技の人のファンだったせいか(^_^;)・・そこが絶対的にダメなんだと思ってしまいますね。

オープニングの女装の所もそう。確かにキレイなのですが、「どうだ、キレイだろう。」という姿勢でこられると、萎えるではないですか(^_^;)。
ちなみに、ここで色気を振りまかれて、やや笑顔の硬直している彩吹が、いたくツボです(^_^;)。

樹里は芝居もショーもかっこ良い場面ばかり。スッキリとキザで歌良し、ダンス良し。客席に降りるピエロも楽しく、自然でオールマイティ。本当に素敵でした。「今が最高の時なのかもしれない。」と分かっていても、退団が惜しいです。
上記のワイン色の場面の後に、もう少しサヨナラを感じさせる場面が欲しかったな、という気もするのですが、あの明るさが、樹里らしいのかな? と思ったりもしました。